大麻のSEX〜マリファナ・ヘンプの「雄株・雌株・雌雄同株・雌株優勢・フェミナイズド」について

今回は、大麻(産業用ヘンプ・マリファナ)のSEX(雄・雌)についてまとめてみます。

産業用大麻(ヘンプ)についての解説をしているウェブサイトなどでは、大麻はは雄株と雌株によって交配する、(オス・メスが分かれている)「雌雄異株(しゆういしゅ)」の植物と説明されています。
ですが、特にヒトとの関わりにおいて大麻(マリファナ・ヘンプ)における性別は、単純な性差異というだけにとどまる話では無いので、もう一歩踏み込んだ話をと思います。

長文になってしまったので目次を作りました。

大麻は雄株と雌株がある。

大麻は基本は雄株・雌株(おかぶ・めかぶ)が独立している種です。雌雄異株というものです。雄株の花粉を雌株が受粉・受精することで種子を付け、子孫を繋いでいきます。男女比は大雑把に言うと「1:1」が基本とのこと。

左が雌株の雌花、右がお株の雄花です。
http://www.ilovegrowingmarijuana.com/male-or-female-how-to-sex-outoor-marijuana-plants/

なお、一つの個体に雄・雌の役割が同居している植物は「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」と呼ばれ、たとえば雄しべと雌しべが一つの花に存在するもの、または雄花、雌花が一つの苗木にそれぞれ発生するタイプ、つまり小学校などで育てるコスモス・アサガオやヘチマ・キュウリなどを想像するとわかりやすいかと思います。

大麻のような「雌雄異株」のポイントとしては、基本的に別株(別の遺伝子)を持っているもの同士で子孫を残すことになるので、遺伝子の情報が多様になりやすいということが挙げられます。異なる遺伝子(性質)を持つということは、流行りの疫病や急な気候変動などで一気に全滅する可能性を低くすることができます。(遺伝情報が多様なため、急な変化に対応でき、生き残る株がその一群の中に存在する可能性が高いと言われる。)

ちなみに日本人が大好きなソメイヨシノ(代表的な桜)は、すべて同じ一本の木から接ぎ木で増えたクローンのため、病気や寿命で一気になくなってしまう恐れがあります。(ソメイヨシノは突然変異種と言われています。)なお、染色体は分裂の回数に限界があるとされているので、接ぎ木クローンの染井吉野のテロメアは一様に短くなっているため、寿命で一気に全滅する可能性が高いとかいわれていますね。(蛇足です。)

大麻は環境適応能力が高い?世界中で栽培可能な植物。

大麻については、一応、中央アジア原産とされております。日本では、縄文時代の貝塚などで種子や繊維が見つかっています。
おそらくは、人類の移動や鳥獣類によって世界各地に広がり、自然淘汰・人間による選択と改良を繰り返すなかで「インディカ・サティバ・ルデラリス」など形状や性質の違う大麻へと分化していったのではないかと想像できます。ここら辺は今後の遺伝学や考古学の研究等で明らかになってくるかもしれません。
なお、大麻は 熱帯〜亜寒帯、低地〜高地 それぞれの地域で育てられる品種があるほど、外部環境に適応できる幅広さを種全体として獲得しています。
これは「雄株と雌株があることによる遺伝的変化が起きやすい」→環境適応能力の賜物かと思われます。もちろん、人為的な品種改良も多くの影響を与えてきたのは想像に難くないと考えられます。

大麻は高等植物?というわけではない。

なお、とあるヘンプ情報のサイトでは「ヘンプは雌雄異株の高等植物」と紹介してますが、ちょっと大麻のことを良く言おうとしすぎかなと思います。
雌雄同株の植物でも、自家受粉しない植物や、雌花と雄花がタイミングをずらして開花する植物もあるようです。要するに、自家受粉を防ぐような仕組みを備えていて、遺伝的な多様性を損なわないようにしているということです。
そういうわけで、雌雄異株が優れているみたいな言い方はあまり賛同できません。もしも、雌雄異株が雌雄同株と比べて種の存続や繁栄といった点において優れているなら、自然淘汰により雌雄異株が世界の全植物種の中で多数を占めてもおかしくないはずですが、現実はそうはなっていません。(なお後述しますが、大麻には雌雄同株の品種もある。)
個人的には雌雄異株・雌雄同株というのは、それぞれの種が連綿と続く進化の中で「最適化」した結果でしかないのではないかという風に考えています。

ちなみに、「高等植物」というのは根・茎・葉を持つものすべてを指すようです。苔とか藻とか除いた植物はすべからく高等植物とのこと。雌雄異株=高等植物ではないですので変に誤解なきよう。

さて、ここからが本題ですが、大麻における雄・雌というのは、人との関わりにおいて、非常に興味深いものがあります。特に産業利用の目的・用途によって、求められる生産物が違ってきます。そのため現在では一般的な「雌雄異株」以外の大麻品種もたくさん栽培されているのです。

それでは「産業用ヘンプ」「医療・嗜好品のマリファナ」のそれぞれにおける雄雌の役割を見てみましょう。

産業用ヘンプ(大麻)栽培における雄株と雌株

基本的に、大麻は雄株:雌株が1:1の割合で発生します。日本の産業用大麻(とちぎしろ)などもこの割合で発芽します。

日本では、伝統儀式用の精麻(繊維)の得るための栽培がほとんどです。繊維用の栽培については、茎の繊維を収穫物としており、オス・メスを区別せずに収穫されているようです。(農業ビジネス http://agri-biz.jp/item/detail/7696?page=1
翌年の繊維栽培用の種子は、種取り用の原種の種から専用に育てる必要があるようです。無毒大麻の品種固定のためかと。これは特に栃木県の品種「とちぎしろ」における話です。

産業用ヘンプの3つの主な収穫物・生産品

国内では、主に精麻(寺社仏閣・儀式用)の産業用ヘンプ栽培しか行われていない状況ですが、海外では、主に種子・繊維(バイオマス)・CBD(カンナビジオール)の3つを主要な生産目的としています。その目的別に各品種の分類をおこない、産業用ヘンプの栽培が行われています。

種子用途・・・食品・飼料として、種子を収穫します。ヘンプシード(麻の実)や麻の実オイルなど良質なタンパク質・脂質・ミネラルが含有されている。

繊維(バイオマス)用途・・・茎の表面の靭皮繊維を、衣料用繊維、パルプ(紙の原料)、ロープ、断熱材、強化プラスチックの繊維原料などに。茎の内側の麻幹(木質部)は産業用資材(家畜の敷料、コンパネ、建材など)に利用されます。

CBD(カンナビジオール)用途・・・カンナビノイド(大麻に含まれる化学物質郡)の中で、陶酔作用が全く無い化学物質。てんかん・抗癌作用が期待され注目を浴びている。高CBD含有の産業用ヘンプ品種も開発されている。

現状、上記の各目的に特化した栽培品種、または種子と繊維など複数の収量が期待できる品種などが開発されています。また、日本と違い大型の農業機器を使用した大規模な栽培が行われています。

下記写真のような大規模栽培において「種子の収穫」を目的とした場合、オス:メスの発生割合が1:1の日本のとちぎしろなどの伝統的な大麻を栽培すると、土地の半分が種子を生み出さない雄株が占めることとなり、非常に高コストになってしまいます。(大規模栽培でオスだけを選んで間引くということは、現実的では無いですね。なお雄株は花粉を放出すると枯れて、そのまま放置のようです。)

産業用ヘンプ大規模栽培の様子(カナダ)
http://www.hemptrade.ca/eguide/fibre-production/fibre-harvesting-equipment

大規模栽培で生産性の高い品種「雌雄同株」「雌株優勢」品種

生産性の観点から、欧米における大規模な産業用ヘンプ栽培では「雌雄同株」・「雌株優勢」という特徴を持つ品種も栽培されています。

「雌雄同株」の産業用大麻・・・一本の株に雌花・雄花を発生させる品種。すべての株で種子を発生させることができる。雌花が花の上部に形成されて、雄花はその下に螺旋状に並ぶらしいです。主にフランス・ポーランド・ウクライナ・ルーマニアなどの長年の交配によって生み出された品種とのこと。英語では「monoecious」。検索すると、雌雄同株の品種がたくさん出てきます。

「雌株優勢」のヘンプ品種・・・雌株の発生の割合が多い品種。英語では「female predominant 」(良い翻訳が無いため「雌株優勢」と勝手に表記。)雄株の割合が少ないため、必然的に収量が多くなるようです。
種子用で有名な品種「Finola」は雌株優勢の品種として紹介されることはないですが、カナダ政府の情報ページによると、やはり雌株の発生割合が高いようです。(※ちなみにどういう理屈でメスの発生率が高くなるのかは、調べてもわからなかったです。申し訳ないです。)

雌雄同株の大麻(産業用ヘンプ)の写真。枝の基底部に雄花の塊、その上部に雌花が連なっている様子が確認できる。
https://www.gov.mb.ca/agriculture/crops/production/hemp.html

大規模栽培を前提に、特に種子の高い収穫量を求めると、雌雄同株でなおかつ雌花の多い品種、もしくは、雄株の発生量がそもそも少ない品種が好まれるのは言うまでもないですね。
雄雌は関係ないですが、パルプや繊維原料用の品種は、3・4mほどの背丈に成長するタイプが好まれるようです。なお、もちろん雄雌が分かれた雌雄異株(Dioecious)の産業用ヘンプのほうがより一般的に栽培・開発されています。

産業用ヘンプの雌雄異株・雌雄同株・雌株優勢の品種それぞれ
http://www1.agric.gov.ab.ca/$department/deptdocs.nsf/all/agdex126

ちなみに、 http://ihempfarms.com/ などの産業用大麻種子業者では、取り扱っているヘンプ品種のそれぞれの特徴をPDFでわかりやすくまとめているところもあります。興味のある人はチェックすると面白いかと。

産業用大麻(ヘンプ)の分野では、一つの株に雄花・雌花ができる「雌雄同株」、雌株の発生割合が高い「雌株優勢」の品種も活躍しているということ、是非とも覚えておいてください。

下記 関連リンク

日本の大麻・世界の大麻(大麻の品種について)~®マークがついた大麻も~

医療用・嗜好用大麻(マリファナ)における雌株と雄株

医療用・嗜好用の大麻(マリファナ)を栽培するに当たって最も重要な事は、「種子を作らせない」つまり「受精させない」ということです。なんと、未受精のまま成熟した雌株の花穂(かすい:花に当たる部分)は、種を作らず、代わりにTHC(テトラヒドロカンナビノールと呼ばれる代表的なカンナビノイド。陶酔作用あり。)を生産し続けます。受粉をすると種子の成長にエネルギーを使ってしまうのでしょうか、THCを含む樹脂の生産はめっきり減少してしまうようです。

マリファナ栽培ではシンセミアを作ることが重要

なお、未受粉の花穂は「シンセミア(sinsemilla)」と呼ばれ、THCの含有量が高く、また一般的に医療用・嗜好用大麻として合法の国で販売され喫煙する部分も、このシンセミア、つまりは「雌株の未受粉の花穂」なのです。これが生産品であり商品になります。

シンセミア(未受粉で成熟した花穂/バッズ)。
種子を結実したものも吸えるが、喫煙するとバチッと弾けてビビる。受精するとTHCの合成が減少するとか。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ST-3-bud.jpg

産業用大麻(ヘンプ)の種子を収穫物とする場合、受粉させ結実させる必要があるのですが、医療用・嗜好用のマリファナ栽培の場合は、とにかく受粉させずに雌株を成熟させることが必須条件となります。(※ただし品種改良の交配や次回の播種用の種子生産の場合は除く。)

そのため、マリファナ栽培時に発生した雄株はすべて取り除きます。ただし、大麻が雄株か雌株か分かるようになるのは、雌花や雄花の器官が発生するまで、ある程度成長させなければなりません。
通常の種子は男女1:1の割合のため、雄株が半分も発芽するのですが、これが非常に無駄にが多く困るわけです。特にマリファナは非合法の国がほとんどだったので、屋内の押入れなどでひっそりと育てられることが多く、雌と分かるまで2本も3本も大麻を育てるスペースの不足といった問題があります。また、時間も栽培用の電気代・肥料代も雄株だったならばすべて無駄になります。)
マリファナ栽培者にとっては、そもそも雌株だけが必要なのです。

フェミナイズド(女性化)シードとは

そのため、マリファナ栽培者向けには「フェミナイズド(feminized)」という種子が開発されました。フェミナイズドシード=「女性化された種子」ということで、雌株の発生の割合がほぼ100%という種子です。
カンナビノイド含有量の豊かなシンセミア(未受粉の雌株)を作り出したいマリファナ栽培者には、これらの「フェミナイズド」は爆発的な需要があり、市場で販売され始めた当初は大変高額な種であったようです。もちろん現在でも大麻種子マーケットには欠かせない存在で、市場の一角を占めています。

では、どういう仕組みで女性化種子というものが作られているのでしょうか。

フェミナイズド(女性化)の仕組み

実は、大麻の雌株は、人為的にストレスを与えることで、雄花(花粉嚢)を発現させ、花粉(精子)を生み出すことがあります。この雌株のオス化(雄花をつける)反応は、自然界において厳しい環境下に晒されると起きる現象のようで、とにかく種子(子孫)を残すために自家受粉・周囲の雌株と受精し遺伝子を残すための反応だということです。

雄雌を決定する花粉(精子)の「性染色体」がフェミナイズドの重要なファクターになります。

通常種子と「フェミナイズド種子」の性染色体の違い

◎通常の交配
雌株の性染色体は「XX
→卵子は必ず「X」の性染色体を持つ。
雄株の性染色体「XY
→花粉(精子)は「X」か「Y」の性染色体。
結びつきの組み合わせで、種子(子)の「XY(オス)」か「XX(メス)」が決まる。

◎雌株(メス)が作った花粉(精子)との交配
雌株の性染色体は「XX
→卵子は必ず「X」の性染色体を持つ。
雌株(オス化し花粉嚢あり)の性染色体は「XX
→雌株(オス化した)の花粉(精子)は性染色体「X」のみ
卵子「X」と精子「X」が受精する。原理的には100%「XX(メス)」の種子が生まれる。この種子をフェミナイズドシードと呼ぶ。

上記のような理屈で、フェミナイズドシードは生み出されています。
植物や魚類では性転換する種は多数あるので、大麻が性転換を起こしても驚くことでは無いのかもしれません。https://ja.wikipedia.org/wiki/性転換 だれかウィキのこの項目に大麻を付け足しておいてください笑)

とにかく、フェミナイズドは原理上は雌株のみしか発生しないため、通常のどちらの性別か生えてくるかわからない種子を栽培するのと比べ、圧倒的に手間・コストを減らすことができます。

フェミナイズドシードの作り方

なお、フェミナイズドシードを作るには、幾つかの代表的な方法があるようです。どちらにしても雌株にストレスを与え、性転換(雌株に雄花を発生させる)を促すというものです。詳細を知りたい方はご自身で検索してください。

1、チオ硫酸銀を噴霧
2、コロイダルシルバーを噴霧
3、ローデライゼーション

1・2はそれぞれ化学物質によりストレスを与え、雄花の発生を促す方法です。3は薬品を使わない方法でオーガニック栽培者が好む方法とのこと。雌株の開花期(フラワリングフェーズ)を意図的に延長し、(どうやってやるかはイマイチよくわからないです)ストレスを与えることで雄花を生み出すというもの。いずれにせよ、自然環境下で起きる「雄化」を栽培環境で再現するということのようです。

ただし、上記のような方法で作ったフェミナイズドの種子でも、何故か雄株が発生することがあるようです。また、雌雄同株が発生することも稀にあるようです。遺伝以外にも育成環境も大麻の性決定における素因となるようです。

とある大手の種子メーカーによると
•窒素濃度が高いほど、メスが多くなる。
•カリウム濃度が高いほどオスが増える。
•湿度が高いとメスが増える。
•温度が低いほど、メスが増える。
•より多くのブルーライト(波長が短い光)を浴びるとメスが多くなる。
•光を浴びる時間が短い方が、メスが増える。

とのことらしいです。(https://www.dutch-passion.com/en/grow-info/feminised-seeds/

当然ですが、日本国内ではどのようなヘンプでもマリファナでも大麻種子を発芽させた時点で、大麻取締法違反としてお縄頂戴になりますので、アホなことはしないでくださいね。

まとめ

以上、大麻のSEX 雄株・雌株のそれぞれの働きと、雌雄同株(両性持ち)女性優位種、フェミナイズなどについてまとめてみました。

記事を書くに当たって色々と調べましたが、やはり大麻は奥が深い植物ですね。受精した場合は、美味しく健康に役立つ「麻の実」を生み出し、未受精の場合でも人類の役に立つ「カンナビノイド」を残してくれる、なんと愛おしい植物でしょうか。
ヘンプ・マリファナ、どちらの大麻業界の人も、研究を重ね素晴らしい品種の開発に研鑽してきたようです。素晴らしいです。
一方で、人々の求めるような特性を発現してくれる大麻の遺伝的多様性にも驚かされたりしてます。
大麻はまさに人類のコンパニオンプランツだなぁと感じました。終わり。

参考ウェブページ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。